戦争がおきるのはなぜ?-子ども哲学開催報告


 

アルコイリスを拠点に、毎月定例で開催されている「子どものための哲学対話」

 

毎回異なるテーマについて、子どもたちと一緒に1つの輪になって考えあう時間をつくっています

 

子どもたちの語りには、

・子どもたちがこの世界をどんなふうに見ているのか

・子どもたちが、日々の暮らしの中で、どんな経験しているのか

・大人や社会が、子どもたちにどんなメッセージを伝えているのか

 

このあたりが露(あらわ)になって、いつでもおもしろさを感じるとともに

1人の大人として考えこまされてしまうこともたくさんあります 

 

子どもと一緒に、この世界についてお話をする場、と言えるかもしれません

 

さて、2022年第1回目のテーマは「戦争ってどうしておきるの?」

ロシア・ウクライナ間で戦争が起きているという、世界の動きもあって、テーマの1つに設定しました

 

とても難しいテーマでしたが、子どもたちと一緒に考え、語り合いました

 

※文中のFはファシリテーター、Pは参加者 をさします

 



ー 戦争って…なにをすること??

 

F:今日のテーマは「戦争ってどうしておきるの?」ですが、戦争ってなにをすることなの?

P:人を殺す。しかもたくさんの人を殺すこと

P:土地とかモノを奪うこと

P:自分たちが強くなるために殺すこと。

 

F:今、どこで戦争が起きてるか知ってる?

P:ロシアとウクライナ

P:マリウポリ?

 

F:それは…どうやって?

P:ナイフとか、剣

P:ミサイルとか、核爆弾とかを使ってドカーンって。

P:武器をつかって戦うこと

 

F:奪うってことだけれど、みんなは人のモノを奪ったことはある?

P:ある。お兄ちゃんの使ってるカセットを奪ってゲームした

でも、あとでやられて奪いかえされた

 

F:じゃあ、もし、ぼくがナイフをもって、みんながもってるものを奪おうとしたら、それは戦争?

P:それは違う、と思う。たんなる犯罪。

P:もっと大きいものの奪いあい。ささいなことじゃなくて、国とか。

P:もっと派手。ミサイルとか。

 

F:じゃあ、もし、ぼくが家からミサイルをこのお店に発射したら?

P:池田砲(笑)

p:ちょっと、戦争とは違う気がする

p:同じ県同士だから違う。

 

F:じゃあ、たとえばここは和光市だから。

近くのさ、たとえば千葉県からミサイルがとんできました!ってなったらそれは戦争といえる? 

たとえばディズニーランドのシンデレラ城から発射!とか

P:(笑)うーん、やっぱりちょっと違う気がする

P:ちっちゃい戦争…と言えるかも。

F:何人からだと戦争っていえる? 

P:一人対一人だとケンカ。戦争じゃない。100人とか? 1000人とか? チーム対チーム。

P:今ウクライナとロシアで戦争やってる。ウクライナとロシアは別の国で、その国と国が戦ってるのが戦争、だと思う。

ロシア軍は勝手にモノや土地を盗んでる。武器も使って。だから戦争。

 



ー 戦争って、どうしておきるのでしょう??

 

F:なるほど。じゃあ国と国の間で、

みんなが言ったように武器を使ったりして戦うことを、一応戦争ということにしてみようか。

その戦争について、学校の先生でもおじいちゃん・おばあちゃんでも何か聞いたことはある?

P:学校の社会の授業でやった。数十年前は日本も戦争をしていて、たくさんの人が死んだ。あと敗けた。

P:あと、日本国憲法?の平和主義で、日本は戦争をしない、できないって決まってるってのも習った

P:身近な人から聞いたことはない

F:みんなのおじいちゃん・おばあちゃんって今何歳くらい?

P:60歳くらい

F:なるほどね、日本で戦争が起きてたのは70年以上前だから、みんなのおじいちゃん・おばあちゃんでも直接戦争に関わったことはなさそうだね

 

F:戦争って見たことはある?

P:みたことない

P:テレビでロシアとウクライナのを見たことある。ミサイルがドカーン。

  

F:戦争をしたい人っているのかな?

P:それが、攻撃をしてくる人なんじゃないのかな?

戦争になってもいいから、何かを奪いたいって思うんだと思う

P:悪い大統領とか、悪い国があって、それが攻めてくる

 

F:悪い国ってのがある?

P:ロシア。

P:アメリカ? 昔日本に原爆を落としたし

P:中国?

F:日本は、どうなの? いい国なの?

P:平和主義で戦争しないって決まってるから。どっちかといえばいいほう。

F:さっき出た悪い国ってのはなんで悪い国なの?

P:相手の国と話さずに、いきなり攻め込んだから

 

F:そういう戦争ってさ、どうして起こるんだろう?? これはたぶんすっごい難しい質問…

P:先にやられたほうがいて、それをマネしてやりかえすから起きる

P:人を殺してもいいとか、奪ってもいいとか考えてる、アホな人が起こすんじゃない?

P:たぶん、人の欲望は止まらないから。

もっとお金がほしい~!とか、もっと大きな土地がほしい~!とか、あと働く人や戦力がほしいとか。。。

もっともっとほしい、が止まらないから戦争が起きる。

 

F:そのさ、もっともっと欲しい~!は、とめるのは大変?

P:自分の経験から思う、かなり無理。ほしくなっちゃうもん、いろいろ。

P:ロシアの場合、大統領?が戦争をするって決めたから、起きた

 

F:考えてみると、人って人を殺していいんだっけ?

P:ダメ。ということになってる

F:戦争だと、なんでいいの?

P:兵士は命令されてるからじゃない?

P:命令に逆らうと自分が殺されちゃうから。殺されないために殺す。

P:こないだニュースで見たんだけれど、ロシア兵が裁判にかけられてた。

人を殺したことが罪ではなくて、それ以外の罪で裁判されてたんだけれど…

なんで人を殺したことで裁かれなくて、それ以外のことで裁かれてるの? よくわからなかった

F:戦争にもルールがあるみたいで、兵士以外の人を襲っちゃいけないとか、勝手にモノをとっちゃいけないとかね。

そのルールをやぶった人は、戦争裁判っていって裁判にかけられることになってるみたいです

 



ー 戦争がおきたらどうする? とめるには…?

 

F:今さ、日本でもし戦争が起きましたってなったら、誰が戦争に行くの?

P:自衛隊の人たち

P:やくざとかヤンキーも? 強いから

P:自衛隊の人たちが行って、それでもだめなら他の大人がいく

 

F:そうなったとき、戦争に参加したい? それともしたくない?

P:嫌だ。なんというかめんどくさい

P:日本は戦力弱そうだから

P:嫌。なんでかというと死ぬのが嫌だから、怖いし、人の死を見るのは気持ち悪い

P:ぼくは…仲間がみんな強かったり、相手よりも有利で勝てるならいいかも

P:友達とかみんながね、戦争に行くってことになったら、やっぱりいこうかなって思うかもしれない

P:地下に逃げる、隠れる。

  

F:子どもは、戦争に参加できるの?

P:たぶん、できない。大人になってからじゃないと。

F:それは、なんで?

P:大人よりも弱いから。すぐやられちゃう。

F:男性と女性だったら?

P:たぶん、男のほうが身体が強い人が多いから、男の大人が行くんだと思う

F:みんなが18歳以上になったら、戦争に行くの?

P:行きたくない。絶対。

P:戦争をするって決めたえらい人を訴える。みんないい人だったらいいんだけれど…。

 

F:そしたら、戦争ってどうやったら止まるんだろう?

P:あっついものを上からかける

F:お湯ってこと?

P:そう。ゲームでは、それで止まる

P:攻め込んだ側の欲望が、全部満足するまでは、ずーっと、止まらないと思う

土地も、お金も人も、ほしいだけ奪い終わったら、たぶん終わる

それまでに、めちゃくちゃになる

P:本気でやめてって言えばいいんだよ。やめて!、じゃなくて、やめて!!!!!!!くらい

そのやめて!を聞いてくれたら終わる

P:結局、話し合いってことなんだと思うんだけれど、それができない

F:なんで、まず話し合いができないんだろう?

P:話を聞いてくれないからでしょ。話し合いで解決できたら戦争って起きない。

 

F:人間以外も戦争ってするのかな? 人間対犬とか、秋田犬対ゴールデンレトリーバーとか?

P:犬や動物はケンカはするけど、戦争はしないと思う

P:人と、それ以外の動物の場合、言葉が通じないから。

たとえば宇宙人とかさ。言葉が通じないから、最後は戦争になっちゃう。

F:ん? そうなると…人間同士の場合、通訳とかつかえば言葉は通じるでしょ。

人間対宇宙人みたいに、言葉が通じないから戦争が起きるのか、言葉が通じるのに話し合いができないから戦争が起きるのか…は?

P:うーーーん…

 

F:はい。ありがとうございました。時間がきたのでこれで今日の子ども哲学は終わりにします。

 


ー 対話を終えて (ふりかえり)

 

戦争はどうしておきるの?という大人にとっても大変難しいテーマでした

しかし、ロシア・ウクライナ間での戦争についても、過去の日本における戦争についても、

子どもたちの目や耳には伝わっていることがよくわかります

 

なぜ戦争が起きるのか、という問いかけについて、

子どもたちから出た「欲望」というキーワードはハッとさせられます

いい国と悪い国がいて、その悪い国が戦争を起こすという二元的な論理をはるかに超えて、

いかんともしがたい人間の欲望が、戦争の背後にある、という一言は、感心させられてしまいました

 

また、どうしたら戦争が止まるの?という問いかけについても、

本気で"話し合えばいい"、本気で"やめて"って言えばいい

子どもたちの間ではおそらく、それで諍いは回避できているはずなのに、

子どもたちが見る大人たちの世界、もしくは戦争が起きている/起きてきた現実は、その簡単な論理すら許されない

というのも、深く考えさせられてしまいます

 

ご参加いただいたみなさま、具体的な考えや経験を語ってくださったみなさま、ありがとうございました

 


 

※この記録は、当日の対話録を頼りに書いています

実際に話された内容と大きく異なってはいないものの

微細な表現や言い回し、また語りのすべてを表現できたわけではありません

おそらく交わされた言葉は文章に表現できた数倍の量だと思います

あしからず

 

文責:川上(アルコイリス)

 



記録・ファシリテーター

◆川上和宏◆

1984年、群馬県生まれ / 大人の秘密基地arcoiris 共同店主

杉並区社会教育センターにて社会教育・生涯学習の企画運営に携わったあと、

2013年にアルコイリスを起業・運営

千葉大学大学院教育学研究科卒、東京学芸大学博士課程満期取得退学

大人向けの哲学対話の場、哲学カフェ@アルコイリス・主宰

その他、この世界について他者と対等に語り合うための場づくりをお店にて実践中