どうして、学校に行くの?


 Movie for Philosophy                    

【導入動画のあらすじ】

夏休み最後の日、「明日から学校がはじまる…憂鬱だな…」一人タメ息をつくテル(中学生)

母親にふっと思ったことをたずねてみます

「どうして私って、学校にいかきゃいけないんだっけ??」 唐突な質問に言葉を失う母

まわりの人たちの考えに触れていきます。

みなさんは、どう考えますか?



ー哲学対話の記録

F=ファシリテーター(指導者)
C=子どもたち それぞれの発言を指します。

F:動画をみてもらいましたね。それぞれどんな考えがでていた?
C:将来困らないように勉強をするため
C:お友達をつくったり、友達に会うため
C:給食がおいしくて好きだから
C:マナーとか協力とか生きるのに必要なことを学ぶため

F:みんなは「がっこう」に行ったら何をしているの?
C:登校する。朝の会があって、健康観察して、授業。休み時間にあそぶ。それで授業、そのあと給食。そんで、掃除して、昼休みはまた遊んで、最後また授業。

 

F:1年生は何で5時間目で終わるの?
C:学年が低いから
C:大変だから
C:めんどくさい~授業めんどくさい~

F:授業がめんどくさい?理由を教えて?
C:勉強やりたくない時!
C:算数はめんどくさくない、国語はキライだからめんどくさい。
C:図工は色を覚えられて楽しい。
C:生活科で公園やパソコン室だと楽しい。
C:パソコンの授業で絵を描いたから楽しい。

F:なにがめんどくさいの?
C:ノートに書く。問題書くのがめんどくさい。ノートに書きづらい。」
C:ノート書くのは好きだから、ギュウギュウ詰めに書けば大丈夫。
C:国語の音読。何度もおんなじところを読むとか。
C:読んでいるとどこを読んでいるか分からなくなる。
C:連絡帳に書いても忘れてしまう。やってないことがドンドンたまる。
C:音読カードに脳が良くなると書いてあって好きになった。
C:音読はお話を読むからワクワクするから楽しい。
C:ワクワクしない~
C:音読はつっかかるからイヤだ。
C:授業が長く感じる時がイヤだ。
C:長いお話は分からなくなる。
C:宿題。お姉ちゃんが邪魔してくるからイヤ。
C:宿題の音読している時に弟と妹がケンカするからイヤだ。

F:完全に邪魔されない部屋で音読やったらめんどくさくないの?
C:そんな部屋だったら、大きな声で読まないとお母さんに聞こえない。大きな声を出してノドが痛くなる。

F:なんで音読はおうちの人にチェックしてもらはないといけないのかな?
C:知らない~
C:本を読む練習だから聞いてもらはないといけない。
C:ウソつくよ。宿題はやりたくないからね。
C:お家の人と、こういう絵(挿絵)なんだよ、こんなお話なんだねって言って欲しい。
C:漢字、ドリルもめんどくさいことだそうです。
C:テストもめんどくさい。テストは話してはダメだし、人のことが気になる。そんな雰囲気がイヤだ

F:どんな授業だとめんどくさくないのか?
C:図工、体育、社会科見学、理科の実験、生活、学活、道徳とか。ふつうの勉強よりはまだおもしろい。

 

F:体育だけ、体育、生活、図工だけだったらいいの?
C:遊ぶ、遊ぶ、遊ぶがいい

F:遊ぶだけだったら学校いかなくていいじゃん。
C:遊ぶ+授業!
C:落ち葉拾いは授業
C:そうじは授業とのこと。
C:学活とか。先生なしで大切な行事についてみんなで話し合うから授業だよ。
C:体育館のシャトルランとか楽しい。

F:みんなは何でめんどくさい授業を受けているの?
C:親とか先生に怒られるから。
C:国語とかやっていると、たまに知らない事があるから。
C:宿題やらないと自分のためにならないから

F:でも宿題ないとうれしい?
C:うれしい!
C:時間がたっぷりできるから、うれしい!

F:そもそも「がっこう」にはあんまり行きたくない?
C:行く時間が決まってるのがいや。遅刻するから
C:学校の入り口に坂があるからなー
C:遠いから、車で行きたい。
C:好きな授業だけ行きたい。

F:じゃあ、どんな学校であれば楽しく行けそう?
C:好きな授業だけの学校
C:バスで行ける学校
C:家の隣の学校
C:4限目まで遊びで5限目だけ授業の学校
C:えーでも、家でも遊べるから授業があった方がいいと思う。
C:授業が遊びや楽しい感じよりも宿題がない方がいい。
C:遊びだけやってたら、大人になったら困ると思う
C:5限目が体育だったら体力がなくなる。
C:1日2万円もらえるなら行ってもいい!
C:お金は自分の自由にならないから、好きなことができる日があるといい。
C:お金よりも、みんなが100点だったら宿題なしとか、学校が休みなるとか
C:それはダメ!だって自分が好きな授業がある日が休みになったら悲しい。
C:それに、休んだら、次の日休んだ分をやらないといけなくなる。
C:その時は休みの日にやればいいんだよ。
C:おうちで5限目やればいいんじゃない?
C:休みすぎると夏休みがなくなるんじゃないか?
C:休みは多すぎてもイヤだし少なくてもイヤだから今のままでいい。
C:週に3日お休みはいいけど4日休みはいやだ。たぶんヒマになる。
C:休みを変更する方がいい。
C:1日交代で学校が休みがいいな。
C:おうちで勉強するってさっき言っていたけど,テストが0点になるかもしれない。

F:ではみんなの立場が変わります。

みんなが校長先生になったら、みんなに来てもらえるような学校にするとしたら、どんな学校にしますか?
C:楽しい学校
C:100点がとれる、問題は難しいけど子どもたちみんなが100点がとれる学校
C:先生が甘い、やさしい学校
C:先生は怖い顔だけど本当は優しい学校
C:校庭が遊園地の学校

F「先生は怖い顔だけど本当は優しい学校」と「校庭が遊園地の学校」のどちらに行きたい?
C:楽しそうだけど、まじめに勉強している人は先生が優しい学校の方に行きたいと思う。
C:校庭が遊園地の学校は好きだけどそれでしか遊べなくなる。

F:では、さらに立場を変えてみよう。そんな「校庭が遊園地の学校」に、もし自分が親になったら、自分の子どもを通わせたいですか?
C:ダメだー!
C:ジェットコースターでケガをする
C:遊びすぎて勉強しなくなる
C:ケガをしないように工夫すればいいのでは?
C:授業はちゃんとやって、やらない子は遊ばせない!

F:ところで、みんなはなんで学校って行ってるんだっけ??
C:…なんでって言われても。考えたことなかったけれど、行くもんだって思ってた
C:ランドセルをもらったときに、学校に行くんだって思った。
C:お兄ちゃんが行っていて、楽しそうだなって。はやく行きたいなって思ってた。
C:学校にいくことに疑問すらもたなかったな。
C:…最初はとても楽しみにしてた。…今はそうでもないけど。

F:学校に行きたくないなってときはあるんだ?
C:ある!

 

F:行きたくないってときはどうするの?
C:でも、それでも行く。しょうがないから。

 

F:どうして?? 家の人に行きなさいって言われるから?
C:いや、自分のため。休んだら勉強遅れちゃうし
C:将来の役に立つから。
C:でもさ、役にたたなそうだなって思う授業や内容もたまにある。
C:将来つきたいって思っている職業に直接使えそうな授業もある。

 

F:役に立ちそうな教科って??

C:国算理社は役に立ちそう。
C:英語は、外国に行かなければ役に立たなそう。
C:そうかな? 外国に行かなくっても、日本に外国人いるし英語は役立ちそうだけど。
C:あとは、総合(総合的学習の時間)。

 

F:総合ってどんな勉強をしているの?
C:調べものとか、なんにでも使える時間。
C:修学旅行の旅行先の調査学習とかやった
C:学級運営(お楽しみ会や席替えなど)の話し合い。

F:総合は役に立つの?
C:将来の役には立たないけど、学級を成り立たせるのには必要?みたいな。

だから、自分 というよりかは、『学校』には役に立つ。
F:じゃあ体育は?
C:役に立つ。
C:楽しいけれど、役に立たない。
C:体育は健康管理や体の運動のためには役に立つのでは?

F:じゃあ音楽は?
C:役に立たない、というより、いらない(笑)

 

F:家庭科は?
C:役にたつし、かつ楽しい。

 

F:図工は? 
C:役に立たないけれど、楽しい

 

F:版画や絵を書くことは役に立つ?? 
C:たたない。けれど図工で学ぶことは、やすりがけとか木を切るとか、その力がつかえるときがある。家の家具をつくるとか

F:授業以外に、学校で学んでることってなにかあるのかな?
C:掃除とか。ほうきの掃き方とか学ぶよね。

F:アメリカは掃除はパートさんがやるらしいけど。なんで日本は自分たちで掃除するの?
C:え、「自分のことは自分でやる」ってことを学んでるんじゃない?

F:掃除以外には?
C:え、給食とか?? みんなの給食を用意したり、給食当番やったり。
C:食べるときのマナーとか。みんなで食べるから、人の食べ方とか見て学べるんじゃない。
お皿持ってたべるとか、音たてないとか、左手出して食べるとか。
C:あと給食って食べるだけではなくて用意とかあるじゃん。配膳の仕方とかも学ぶ
C:授業以外だと、朝の会、学活、クラブと委員会、運動会とか学校行事。修学旅行とかスキー教室もある。
C:修学旅行とかは班で調べものしたりするし。
C:クラブはお楽しみ。委員会はお楽しみだけでなくて、なんか重要。

F:でもさ、好きなことだけを徹底してやるのも大事じゃない?
C:たしかに学校っていろいろ学べるけれど、算数だけ、とか国語だけとか…
C:それだとたぶん、自分の嫌いなことはやらないから、大切なことを学べない気がする
C:いまはたぶん役にたたないって思うけれど、それは今の自分がそう思うのであって、もしかしたら役にたつかもしれない。

 

F:学校に行く意味はあるって思っているひとは?
 <全員が手をあげる> C:行かないと将来なにもできなくなっちゃうから

F:塾と学校の違いは??塾は役に立つの?
C:学校の授業に役にたつ。先どって学ぶから。
C:子どものペースに合わせて授業してくれる。学校だと、30人くらいいて、よくわかってない人が1人いても、飛ばしちゃうじゃん。フォローしてくれる先生はいるにはいるけれど。学校は授業の中で置いてけぼりになっちゃうけれど、塾(個別指導)だと少人数の子どもに先生1人だからいい。そうなると理解度にそって、勉強が教えられる。
C:自分ができないところをフォローしてくれるから、塾は役にたつ。
C:自分ができないところっていうより、学校の授業より先に教えてくれて、その内容聞いてわかんないところは自分で聞きにいく。
C:つまり塾は、学校の授業をさきどったり、もしくはフォローしたり、とにかく学校の勉強の役に立つ

F:学校の勉強の役に立つとはいえ、

たとえば三角形の面積をもとめるようなことは18歳以降受験勉強を終えてから、人生で1回もなかったよ?
C:そういうこまかいのは、「念のため」じゃない?
C:とにかく、将来本当に役にたつかどうかわかんないけれど、念のため、学ばしとくのが学校。
C:国算理社は、金融とか哲学とか経営とか専門的なものを学ぶまえに、子どもでもわかるようにちっちゃくしたもの。だいたいこれがあれば生きていけるってことなんじゃない?

F:じゃあ、みんなが超頭よくって、先生の言うことが全部わかってて、先どって勉強してしまって

教科書の内容とかみんな理解できたとして、それでも学校に行く必要性がある?
C:復習のため。昔にやりすぎても忘れちゃうから。
C:自分以外の人と触れ合う時間? そもそも学校にいかないと友達できないし。
C:一人で遊んでても飽きるし。
C:生活のもろもろ教われるし。
C:たぶん、人との「つきあい方」を学んでる。

F:じゃあ、将来の夢が決まっている。その夢に近づくためにやるべき勉強もなんとなくわかってる。

そんなときはそれだけ勉強したってよいじゃない?
C:夢である職業につけるかわかんないし、夢も変わるかもしれないじゃん。今、不安定だし、転職?解雇?もあるし。だから、一応学校に行っとく。


F:え!?じゃあなんかあったときに困らないために行ってるってこと?
C:今ある職業がずっとあるって言えないし、つぶれちゃったり異動?しちゃったり、病気のせいでクビになったり。そういうのも、よくわかってるってこと。
C:そうそう、ホケンっていうのかな。そのためです。

F:はい。時間がきたので今日の話し合いはおしまいです。ありがとうございました。

※これは小学1年生~6年生までの子どもたち17名が、1つの輪になって話し合った記録です。

 

 


ー対話を深める問いかけの言葉

 

 ・つーぼーが大人たちに「なんのために生きるの?」って聞いてたね。どんな意見が出てた?

 ・その意見の中で自分の考えに近いものはある? 理由は?

 ・生きててよかった!とか生きてて幸せってときはある? それはどんなとき?

 ・逆に生きてて嫌だなって思うときは?

 ・植物や動物にも生きる目的はある? それともない? 理由は?

 ・植物や動物にもこうしたいって意志はあるのかな?

 ・ある目的のために生きてる場合、その目的がなくなってしまったらどうする?

 ・もし子どもが産めなくても生きてる意味はある?

 

 


ー 対話をおえて(ふりかえり)

 

今回のテーマは「学校」

子どもたちが毎日行っているところなので、それぞれがどんな風に学校で過ごしているのか聞いてみました。

どんどん意見・経験が出てきます。勉強したり、掃除したり、友達と遊んだり、宿題が出て嫌だったり…

 

ある子どもが「でもめんどくさい」といったその一言をきっかけに「何がめんどくさいの?」と問いかけてみたら、反復学習や宿題、先生の長い話…自分の好きに、自由にできないことへのめんどくささを一斉に語りだしました。


私たちの取り組みでは、その「めんどくささ」に対して、どんな学校だったら楽しくいけそうか訪ねてみると、「遊び」に特化した学校案が提出されます。

しかし、学校を運営する「校長先生」の立場、そして学校に子どもを生かせる「親」の立場、それぞれの立場にたって考えると…どうやらそんな学校だと子どもにとってはよくないだろう、ということもわかりました。

 

めんどくさいけれど、勉強も学校もどうやら将来の自分にとって大切なことらしい、ということを考えているようです。

そこで将来の自分にとって何が、どう役立ちそうなのかを分類して聞いていきます。

どの授業が大切そうなのか? 勉強以外の掃除や給食、学活などはどうしてあるのだろうか? 

子どもたちの考えは学校は勉強するところという考え以上に、マナーや協力関係、友人関係…「人と人との付き合い方」なんてキーワードも出るほど、さまざまな価値を学校が有していることがわかります。

 

さまざまな場面・側面がある「学校」の中身を1つ1つ丁寧に分類していくと、よい話し合いになるのかもしれません。
とはいえ、夢みた仕事につけるわけではないし、仕事も会社がつぶれたり、クビになったり、そんな現実があることも知っていて、だから将来役立つかどうかはわからないけれど「ホケン」のために学校に行って勉強している、というクールな意見には肝を冷やされましたが。

 

 


記録・ファシリテーター

◆川上和宏◆

1984年、群馬県生まれ / 大人の秘密基地arcoiris 共同店主

杉並区社会教育センターにて社会教育・生涯学習の企画運営に携わったあと、

2013年にアルコイリスを起業・運営

千葉大学大学院教育学研究科卒、東京学芸大学博士課程満期取得退学

大人向けの哲学対話の場、哲学カフェ@アルコイリス・主宰

その他、この世界について他者と対等に語り合うための場づくりをお店にて実践中