戦争って、どうしておこるの?


 Movie for Philosophy                    

【導入動画のあらすじ】

つーぼー(小学5年生)は、学校の社会の授業で、人間がたくさん戦争をしてきたことを学びます

「どうして戦争って起こるの?」

「なくならないの?」 

超難問!?な疑問をいろいろな大人にぶつけてみます…

悪い国があるからおこる?

強い国がいるからおこる?

食糧や領土を得るためにおこる?…

みなさんはどう考えますか?



ー哲学対話の記録

F=ファシリテーター(指導者)
C=子どもたち A=大人たち のそれぞれの発言を指します。

F:みんなは「戦争」って言葉を聞いたことはありますか?
C:ある。
<全員が手をあげる>

F:戦争ってどんなことなの?
C:爆弾とかミサイルでどかーんて。たくさん人が死ぬ。
C:大きなケンカ。国と国どうしの。
C:テレビで見たけれど、昔、日本がアメリカの船をどかーんって攻撃して、戦争がはじまった。
C:国や土地、資源?の奪い合い。
C:地雷とか爆弾とかを使って戦いあう。
C:戦争をやろうっていった人が戦争をして、そうじゃない人が逃げ回る。

F:「国」って言葉がでたけれど? 国ってなんだかわかる?
C:1つの考えや意見?でまとまっている集団。
C:日本人とか、アメリカ人とか、そういうの。
C:町や村が集合している。

F:その国と国が戦うのが戦争ってことでよいのかな?
A:「内戦」って言葉はしってる? 埼玉県と東京が戦うみたいなものかな。
C:絶対東京が勝つでしょ。
C:もっと昔は、武士と武士が戦をしてた。日本の中の、となりの国同士で。
C:日本っていう国のなかで起きてるんだけれど、県とか市みたいなのが集団同士で戦うこと。

 

F:「内戦」も戦争ってことでよいのかな?
C:そう思う。ある国や市でもなんでもいいんだけれど、半分がチームでもう半分がチームで、2つに分かれて戦うこと。

F:今、ここには20人くらいの人が集まっているけれど、ここで2つにわかれてケンカしたとしたら、それは戦争っていえる?
C:ここには子どもが多いし、子どもってグーでぶちあうくらいしかできないし。戦争って、銃とかミサイルとかでやりあうことだから。それはケンカだと思う。

F:じゃあ、ここにいるみんなが銃を持っていたら?
C:子どもがやることは戦争っていえないと思う。

 

F:戦争と、ケンカの違いってあるかな?
C:戦争って人がたくさん死んだりするでしょ。人が多いときは戦争になって、少なかったらケンカ。
C:人が少なくても、何十年も続いていたりすることが戦争。たとえば短時間で終わってしまったら。1時間とか。それは戦争っていうのかな?
C:私のイメージでは、ケンカはふつうの人たちがやること。戦争は、くらいの高い人、総理大臣とかがぶつかりあって、ふつうの他の人たちを巻き込んでやること。
C:戦いの規模が大きいものが戦争。
C:一人の人が、リーダーのようになって、まわりに命令をしてやる戦い。
C:質問なんですけれど、サウジアラビアで日本人の記者が殺されちゃった事件があったけれど、あれも戦争になるのかな?
C:うーん。

A:1つ質問だけれど、子どもは戦争はしないのかな?
C:えーとゲームで、戦ったりバトルしたりってあって、そういうのはよくやる。
A:子どもってケンカしてもすぐ仲直りしちゃうとかできちゃうでしょ。相手をやっつけてぼこぼこにして、相手が立ち直れないくらいに。そのあとの仲直りやその先も考えないようなのが戦争。仲直りを前提でたたいちゃったりするのは、ケンカ?

F:少し話をまとめてみると。戦争には規模が大きかったり、人数が多かったりする。

あと一人のえらい人みたいなリーダーが他の人に命令したりしてまわりを巻き込み、しかも仲直りとか考えないで、やるのが戦争ってことですかね。
C:あと、派手なのが戦争。どかどかどかーんって。
C:相手をぶつとか、仲直りもそうだけれど、そういうのってやさしさがある。戦争は相手をうらんでうらんで、って思ってやる。
C:でも、うらみとかなくて、たとえば、ただ偉くなりたいとかで、リーダーが起こすこともある。
A:仲直りって話があったけれど、戦争は勝ち負けをつけたがるのかもしれない。もしくは目的がある。 相手の国のお金とか土地とかがほしいとか。

 

F:となると、今日のテーマになりますが、「戦争ってどうして起きるのだと思う?」
ちょっと、動画をつくってきたので見てみようか。
<ここで動画を見る>

F:どうして戦争が起きるのか、どんな意見があった?
C:いい国と悪い国があって、悪い国が悪さをしようとして戦争が起きる。
C:貧しい国が、生きるために必要なものを手にするために戦争を起こす。
C:欲望。豊かな国がもっとほしくて戦争する。
C:言葉とか肌や髪の毛の色が違うから、相手の考えがよくわからなくてやる。
C:おじいちゃんが戦争で死んじゃった。そういう、うらんでいる気持ちが戦争を起こす。

F:はい。5つの意見があったけれど、自分の考えに近いもの、1つ選んで手をあげてもらえますか?
<それぞれに手をあげる>
「欲望」(豊かな国がもっと豊かに…)に多くの手があがる。

F:じゃあ、この5つ以外っていう意見はある?
C:この5つが全部ちょっとずつ入ってる。
C:4つ目の言葉の違い、に近いけれど。相手の国への不安とか恐怖とか? 相手が攻めてくるかもしれない。ミサイル打ってくるかもしれない。だから攻められる前にやっちまえ、みたいな。
C:たとえば1つの考えがあって、その考えに従わない人がいる。その人たちを従わせるために、戦争する。信じている神とか、信じていることとか。

F:どうしてその意見に手をあげたのか理由を言える人はいますか?
C:悪い国といい国にあげた。

 

F:悪い国ってどんな国なの?
C:なんかうまくいえないけれど、その国を「いい国」とか「悪い国」とか、そう思い込んだら、その国になる。自分の国より遅れていたり、平等じゃなかったりしたら、その国を悪い国って言うし、そう思う。
C:豊かな国が起こすっていうのに手をあげたのだけれど。たとえば、今月、高い買い物しちゃって、おこづかいがないんで、いろいろ我慢してるんですけれど。無性にお菓子がたべたくなるときってあって。もっと欲しい!っていう、その、やっぱり人の欲望をとめるのって難しいなって。

 

F:動画の中で、つーぼーが質問していたけれど、戦争を起きないようにするためにはどうすればいいと思う?
C:他の国の人と仲良くすればよい。
C:大人がちゃんとすればいい。
C:「戦争をやりたい」って人を集めて、どうしてやりたいのか、こういうような場で話を聞いてみる。もしくは「やらないで」って意見を伝える。
C:昔、ヨーロッパでは100年戦争ってあって、100年もやってたわけでしょ。戦争は人もたくさん死ぬし、土地も荒れる。無駄。ほんといい加減やめてほしい。
C:国のリーダーが戦争をはじめるって意見が出たけど、その選ばれたリーダーが政治をして決めるわけだから。「とくにいい人」を選挙で選べばいい。

F:「大人がちゃんとすればいい」、という意見がありましたが、具体的にはどうしたらいいか教えてくれる??
C:日本は戦争をしない、という憲法を変えないでほしい。
C:憲法をやぶったら罰金とか、もっと強くする。
C:選挙に、めんどくさいから出ないって大人が多いって聞くけれど、ちゃんと選挙に行って、いいひとを選んでほしい。
A:選んだ人が、戦争をしないかどうかはわからないけれどね。

 

F:はい。ありがとうございました。時間がきたのでこれで哲学対話を終わりにします。

※これは、小学2年生〜小学6年生まで12名の子どもたちと、6名の大人たちが参加し、1つの輪になって哲学対話をした記録です。


ー対話を深める問いかけの言葉

 ・「戦争」って言葉は聞いたことがありますか?

 ・どんなことをするのが戦争?

 ・「国」ってなに?

 ・ケンカと戦争はなにが違うの?

 ・子どもにも戦争はできる?

 ・戦争した相手の国と仲直りはできる?

 ・戦争によって得られるものはあるのかな?

 ・話し合えない相手っているのかな?

 ・いい国と悪い国があったとして、それってそれぞれどんな国なの?

 ・どうして戦争って起こるの?

 ・戦争が起こらないためにはどうしたらよい?

 ・平和であるってどういうことなのでしょう?

 

 


ー 対話をおえて(ふりかえり)

 

戦争はどうして起きるのか、パッと聞くととても難しい「問い」のように思えますが、

子どもたちはそれぞれに、戦争のイメージや考えがあることが私たちの実践を通じてよくわかりました。


この動画には、戦争のイメージを描いた部分がありますが、

まずは動画を見せる前に「戦争」のイメージを子どもたちに問いかけることからはじめるとよいかもしれません。

 

私たちの試みでは、戦争は、規模・期間・人数・武装ないし兵器の使用といった条件や、リーダー・えらい人・選挙で選ばれた人の指示・命令という上下の集団の形成、普通の人は逃げる・巻き込まれる、といったイメージが出されました。子どもたちにとって身近な「ケンカ」と「戦争」を区別する条件をさぐってみるとよいかもしれません。

 

そのうえで、動画をみなで見、なぜそうした戦争が起こるのか、を考えてみる。動画には戦争が起こる理由が5つ描かれていますが、それ以外の意見も引き出してみるとよいと思います。

そして、なぜ起きるのかを考えた先に、起きないようにするには何が必要か、を聞いてみると、驚くほど子どもたちは社会についてよく見ていて、大人の政治への無関心や不戦の憲法の存在などが意見として出されました。

 

一国のリーダーを国民は監視・選択せねばならないこと、そのリーダーの選択を間違えると戦争が起こると考えていることがわかります。

 

時間が足りなくて私たちはできませんでしたが、逆に「平和」へのイメージというのも聞いてみるとおもしろいと思います。

戦争していないこと、を超えて多様なアイディア・イメージに触れられると思うから。

 

 


記録・ファシリテーター

◆川上和宏◆

1984年、群馬県生まれ / 大人の秘密基地arcoiris 共同店主

杉並区社会教育センターにて社会教育・生涯学習の企画運営に携わったあと、

2013年にアルコイリスを起業・運営

千葉大学大学院教育学研究科卒、東京学芸大学博士課程満期取得退学

大人向けの哲学対話の場、哲学カフェ@アルコイリス・主宰

その他、この世界について他者と対等に語り合うための場づくりをお店にて実践中